05:インナー・ブリッジ。
父は島でうたた寝をしている。
猫のワガハイは
あおむけにひっくりがえり
小さな手? を海に落としている。
向こうの音楽の森では
ムーンリバーが静かに流れている。
ブルーのウインドウ・スクリーンに染められた
初秋の日差しのせいで
そこは海底のようにも見える。
少女はブリッジで海を見下ろしている。
勉強に飽きると
いつも
少女は部屋を出て
ここから居間を眺める。
あの白いカーペットが、島。
オーディオがはめ込まれたコーナーが、
音楽の森。
そして、ここが橋。
小さい頃から
少女はこのブリッジが大好きだった。
小学校低学年の頃は
子供部屋から机を持ち出して
ブリッジの隅で勉強したり
居間に続く階段で過ごしたものだ。
「綾ちゃん、おやつよ」
──海の片端で母の声がする。