03:図書室。


彼は幼い頃から本と名のつくものが好きだった。 物心がつくかつかないかの時分に、 母が繰り返し読んでくれた一冊の童話集。 思えば、それが本遍歴の始まりだった。 童話に漫画や図鑑が混じり、 やがて学校の図書室に並んだ小説が心をとらえ始めた頃 もうひとつ 彼を夢中にさせるものが現れた。 ビーカーとフラスコである。 透明なガラスの中で物質が変化していく不思議な世界。 少年の小宇宙。 いま 彼は化学会社のエンジニアである。 その彼が家を新築することになった。 彼の頭に真っ先に浮かんだのは、 図書室をつくることだった。 書斎ではなくて、図書室。 小さくてもよい。 扉を開ければ学校の東の隅にあったあの部屋のように 宇宙が広がる場所。 今日も彼は 帰宅すると先ず、 2階の図書室へ駆け上がる。
08:薪をくべる。
07:ホワイトクリスマス
06:夜の茶会。
05:インナーブリッジ。
04:風は榛名より。
03:図書室。
02:懐かしき丘の上。
01:借景、そして我が庭。

text by Mr. Koun
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